医薬品・医療機器プロモーション資材審査

2023年3月27日

    【プロモーション資材審査Q&Aシリーズ】「開発パイプライン」表示の限界とは?資材に掲載できる開発パイプラインの表示範囲について解説。

    こんにちは。レビュープロの近藤です。
    医薬品・医療機器のプロモーション資材審査の業務を取り扱っています。

    さて、この記事を見ているあなたは、自社の「開発パイプライン(開発品目一覧)」は、プロモーション資材にどこまで掲載できるのか、について知りたいと思っている方ではないでしょうか?

    承認外情報とは「未承認薬・適応外薬等に関する使用情報」

    「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインについて」(平成30年9月25日)(以下「販売情報提供活動ガイドライン」)では、「提供する医療用医薬品の効能・効果、用法・用量等の情報は、承認された範囲内のものであること。」としています。

    この「効能・効果、用法・用量等の情報」の意味に関して、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインに関するQ&A(その2)」(平成31年3月29日))(以下「販売情報提供活動ガイドラインQ&A(その2)」)において、求められた際に提供できる「未承認薬・適応外薬等に関する情報」を「未承認薬・適応外薬等に関する使用情報(効能・効果、用法・用量等の情報)」と表示していることから、「効能・効果、用法・用量等の情報」は「使用情報」に読みかえられます。

    したがって、承認外情報とは、「未承認薬・適応外薬等に関する使用情報」を指します。

    この考え方は、IFPMAのコード・オブ・プラクティスにも「医薬品は、当該国において申請の承認が下りるまで、当該使用(off-label use) に関するプロモーションを行なってはならない。」とあることから、国際的に共通の認識と考えられます。

    未承認薬・適応外薬等に関する「使用情報」の意味すること

    「販売情報提供活動ガイドラインQ&A(その2)」において、求められた際に提供する「使用情報」の例として、「治療ガイドライン、査読付き原著論文、FDA・EMAなど海外の行政機関が公表している審査報告書や副作用情報」などを挙げています。

    このことから、「使用情報」とは、一般的には、開発品の臨床試験における「使用結果」である「未承認薬・適応外薬等を使用した有効性・安全性情報」を指すと考えられます。

    未承認薬や適応外薬の「効能・効果」・「用法・用量」は承認外情報に該当するか

    承認外情報が「未承認薬・適応外薬等を使用した有効性・安全性情報」を指すことは理解できますが、それでは、未承認薬・適応外薬の「効能・効果」・「用法・用量」の表示はどこまで許容されるのか、という疑問が湧いてくると思います。

    これについては、「販売情報提供活動ガイドライン」において、販売情報提供活動の禁止行為として「承認された効能・効果、用法・用量等以外の使用方法を推奨すること。なお、外国において承認等を得ている場合であっても同様であること。」をあげています。

    したがって、未承認薬や適応外薬の承認されていない「効能・効果」や「用法・用量」の情報は、当該開発品の「使用方法」として「使用情報」に含まれているため、プロモーション資材には表示することはできません。

    この点で、たとえば自社開発品の情報提供において、臨床試験結果である有効性・安全性情報を表示せず、臨床試験の目的・対象や試験方法などの「試験概要」のみであっても、「試験概要」から当該開発品の「使用方法」が判別できることから、開発品の「試験概要」についても、表示は避けるべきと考えられます。

    以上より、未承認薬・適応外薬の「使用情報」は、以下の「使用結果」と「使用方法」の2つの要素により構成されます。

    「使用情報」
     の2要素
    未承認薬・適応外薬の使用情報事例
    使用結果開発臨床試験結果
    (有効性・安全性情報)
    治療ガイドライン
    開発臨床試験結果の査読付き論文
    承認国の当局による審査報告書
    副作用情報
    使用方法「効能・効果」・「用法・用量」開発臨床試験の試験概要
    承認国の添付文書

    プロモーション資材に掲載できる開発パイプラインの具体的な表示項目

    以上より、プロモーション資材に掲載できる開発パイプラインの具体的な表示項目は、「使用情報」以外の下記が、表示できる範囲になります。

    • 開発品の開発コード・一般名
    • 開発品の対象疾患(領域)
    • 開発品の薬効・作用機序
    • 開発品の各国における臨床フェーズ(開発段階)
    • 開発品の既承認国

    他方で、具体的な「使用情報」とまではいかなくても、いろいろな解説を加えていくと、承認前の事前プロモーションを行っていると誤解される可能性があります。

    たとえば、第3相試験の進捗を強調し、医療関係者の期待値の上昇を意図しているような解説などは、承認前の事前プロモーションを疑われかねません。

    また、未承認薬の承認国におけるブランドネーム(商標登録済の商品名)の表示は、医薬品医療機器等法(薬機法)第68条で、承認前の医薬品について「認証を受けてないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する公告」を禁止しているため、表示はできませんのでご注意ください。

    尚、適応外薬についても、同法に基づき、商品名を表示すべきではありません。

    したがって、開発パイプラインの紹介では、「使用情報」だけでなく、このような解説や商品名の表示も避けるべきです。

    次回は【ノンプロモーション資材審査Q&Aシリーズ】として、Vol.2「メディアセミナーのお作法とは?」について解説いたします。

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