こんにちは。レビュープロの近藤です。
医薬品・医療機器のプロモーション資材審査の業務を取り扱っています。
今回の記事を見ているあなたは、プロモーション資材に使用できる「観察研究」とは、一体どのようなものがあるのか、知りたいと思っている方ではないでしょうか?
観察研究は、無作為化比較試験などの介入研究と比較してエビデンスレベルは低くなりますが、自社品のみのデータであれば、査読付き論文によってプロモーション資材化は可能です。
観察研究で、資材化が可能な試験デザインは、以下の事例が考えられます。
比較対象の設定 | 主な観察研究 |
あり | 前向きコホート研究 後ろ向き研究 ケース・コントロール研究 |
なし | ケースシリーズ研究(症例集積報告) 症例報告(1例報告) |
比較対象を設定している観察研究の注意すべきポイントとは?
比較対象を設定している前向きコホート研究、後ろ向き研究、ケース・コントロール研究の試験成績は、多施設・単施設に関わらず、また症例数の多寡に関わらず、資材化は可能です。
ただし、比較対象が他社品の場合には、他社品名を表記してデータを掲載することはできません。
また、症例数が10例未満の観察研究でも、査読付き論文投稿により資材化は可能ですが、有効率などについて棒グラフ等の%表記は制限されます。
比較対象を設定している観察研究の内、対象薬から自社品への切り換えを行っている試験では、切り換え前の前治療薬、すなわち他社品のデータを表記することはできません。
たとえば、切り換え試験では、開始は「切り換え時」ではなく、「0週」もしくは「開始時」とし、切り換え前の他社品のデータは載せないようにするのがポイントです。
また、相手薬の誹謗にならないよう、切り換え前の他社品名(一般名)をタイトルに入れたり、他社品を解説することがないよう、注意する必要があります。
試験概要には、切り換え前の他社品が複数ある場合には、他社品名(一般名)の記載は可能です。
ただし、1対1の切換えの場合は、他社品名の記載を避けて薬効群名等にするのがポイントです。
製剤の使用感や服薬コンプライアンス等のアンケート調査に基づく観察研究についても、査読付き論文への投稿により資材化は可能です。
ただし、ここでも他社品との比較はできませんので、ご注意ください。
比較対象を設定していない観察研究の注意すべきポイントとは?
比較対象を設定していないケースシリーズ研究は、自社品の安全性に関する情報提供がメインとなります。
ケースシリーズ研究の有効性については、比較対象を設定していないことから、有効性の強調表現にならないよう事実を淡々と述べる程度にとどめるべきです。
ケースシリーズ研究の具体的な事例として、使用成績調査、特別調査などの市販後調査があげられます。
これらのデータを資材化する場合、安全性については、承認の範囲内の使用と範囲外の使用を含めて全情報の掲載ができます。
また、再審査期間中で論文未発表の段階でも、安全性の注意喚起を趣旨とする場合、資材への掲載は可能です。
これに対して、有効性については、承認の範囲外の使用が含まれていることを考慮し、承認の範囲内の使用を区別して解析した上で、有効性の考察・評価としなければなりません。
また、再審査期間中に有効性の考察・評価を資材に掲載するには、科学的根拠として査読付き論文からの引用としなければなりません。
尚、「再審査申請資料として評価された成績」については、承認時評価資料と同様に、「再審査評価資料」の出典名にて、資材への掲載は可能です。
この際の有効性情報については、承認の範囲外の使用を含めて調査を行っていることから、治験と同等以上の有効性を訴求することのないよう、「本剤の有効性に特段の問題はみとめられなかった」など、再審査評価資料に記載されている表現にとどめるべきです。
紹介できる症例報告の3要件とは?
症例報告については、例外的・限定的な症例により、それが一般的事実であるかのような誤解を招くことのないよう、原則的にはプロモーション資材への掲載が禁止されています。
ただし、製薬協作成要領の基本的留意事項では、必要性が認められる場合に限り、以下に該当する症例報告は紹介できるとしております。
- 副作用や使用上の注意を具体的に注意喚起するために紹介する必要がある場合
- 希少疾病や少数例の特殊疾患への使用を紹介する必要がある場合
- 造影剤等、画像以外で紹介することができない場合
尚、上記の症例報告については、「学術雑誌に掲載された症例、承認時評価資料等として評価された症例」以外に、「学会で報告された症例、あるいは症例報告者が明らかな症例を記載してもよいが、症例報告者名を(学会の場合は学会名も)明記すること。」とあることから、査読付き論文からの引用でなくても、症例報告者名を明記することにより掲載は可能です。
次回は、新規のシリーズとして【コード・オブ・プラクティスQ&Aシリーズ】のVol.1「アドバイザリーボードミーティングのお作法とは?」について解説いたします。
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